先週の木曜日、3月16日にプラハに戻ってきました。
プラハ空港にはプラハで一緒に会社を経営しているチェコ人の同僚のマリアンに迎えに来てもらい、プラハ9区の自宅まで送ってもらいました。空港を出発し、早速WBCチェコ代表について訊いてみました。チェコで凄いことになっているという話は日本にいる時に聞こえてきましたが、果たして現地の生の声、且つ野球に関心がないマリアンの意見は?
●今回のWBCを知らないチェコ人はほぼいない*
●日本が野球が強いことを知っている
●チェコ代表がアマチュアであり、世界のプロ選手と戦ったことも知っている
●バレーボールでもプロはいる
* WBCという名称は知らなくてもチェコ野球代表が出た大会で認知
しかし、大谷翔平選手は勿論、日本チームのメンバーを知らないしどういう歴史がある大会かも知られていません。野球のルールで初歩的な何球ストライクでアウトも知らないどころか何回までするかも知りません。
チェコでは野球はトップ20に入れるかどうかのスポーツ。試合の中継は年に一度あるかないか。プラハ市内でフロアボールのスティックを持つ若者をよく見かけてもバットケースを持つチェコ人は一切見ません。
日本でトップ20に入れるかどうかのスポーツをフロアボールとしましょう。いや、失礼だが五輪競技で言うならハンドボールにしましょう。ハンドボールの世界選手権がプラハであり、そこに日本代表が初めて出た。対戦相手はプロ選手ばかりなのに日本は全員アマチュア。社会人もいれば学生もいる。社会人の中には企業のチームではなく、クラブチーム所属がおり、職業は消防士。有給休暇でプラハに来ていた。全くWBCチェコ代表と同じ土俵。しかし、申し訳ないですが日本ではハンドボール日本代表は報道されません。
WBCチェコ代表が話題になった理由。
①チェコのスポーツ新聞の扱い
②メディア戦略
③日本での開催
④潤沢な資金を持つ主催者とその大会
先に②から言わせて頂くとWBCチェコ代表には専属のメディア、広報担当者が複数人おりました。英語もペラペラだし、勿論野球にも精通。カメラウーマンも連れてきた。試合中や試合後に直ぐにSNSに投稿。そして宮崎事前合宿からチェコ人ジャーナリストが複数人来日。果たして日本の記者がトップ20にも入るかわからないスポーツの取材をしにはるばる一日掛けて来ますか?WBC出場が決まってチェコ代表には4000万円の報奨金が出たと聞きます。この資金を基にメディアガイドも自前で作成。元MLB選手のソガード選手を除けば世界で名が知られた選手がゼロだったのも大きい。注目される選手とされない選手の格差がなかったです。
次に①ですがチェコのスポーツ新聞も勿論通常はサッカーやアイスホッケーが中心ですがWBCの期間、チェコ代表にリスペクトを持って記事を載せます。クラブチーム<代表チーム、という構図です。日本でも代表チームは特集されますが、残念ながら野球とサッカーぐらい。あとせいぜいラグビーですね。代表チーム<読者又はスポンサー、という構図です。
そして④ですが、これも大きかったですね。世界規模で放送され、且つ莫大な放送料になる大会は①五輪②サッカーW杯、そしてWBCです。日本ではこれに続くのはラグビーW杯でしょう。残念ながらこれ以外の団体競技ならどこの国の地上波でも放送されないと思います。
最後に③です。正直チェコ代表が違うプール、台湾や米国で試合なら日本では話題にならないし、チェコでもこれほど話題にはならなかったと断言できます。台湾で試合をしたイタリアやオランダの話は出ませんし、米国で試合をした英国やイスラエルの話題も一切出ませんでした。日本で試合をしたので日本戦以外でもスポーツニュースで取り上げられたのが大きいですね。
実はこれは日本あるあるで、日本人は自国以外の国も昔から応援する気質がございます。日本の試合でもないのに自腹でチケットを買って応援する。チェコ対オーストラリアも当日券に長蛇の列でしたしね。米国での試合で試合をする当事国以外の国民、子孫がどれほどいたのか?欧米で日本が戦っても話題にはなりますが、話題になるのはゴミの片づけをするサポーターやロッカールームを綺麗に使う選手らで日本の試合で日本を応援する日本に関係のない現地人はいないんですよね。イタリア代表のウェアを身にまとうチェコ人や米国人を見たことが無いですが日本では当たり前です。しかも野球通でなくてもチェコ代表のことを日本国民の大半が知りましたので。この点も日本のメディアが欧米のメディアと違う点かと。
次回のWBCは3年後。プールBで最下位ではなかったチェコは次の大会は予選免除で出ます。しかし、問題はどこで試合をするのか?日本国外なら今回のWBCである程度日本でも注目はされます。しかし、また東京ドームでならどうなるか?
予言しておきます。この場合は大凄いことになります。日本戦以外でも東京ドームにはチェコを応援する日本人が大挙して来場するでしょう。そして二回目の出場で今回の反省点も分っております。準備万端で東京ドームで試合をすることになります。
筆者:合田哲郎(日本チェコ協会理事。今回のWBCではチェコ代表の宮崎事前合宿でチームのボランティアスタッフ及びテレビ局の通訳として活動。東京ドームでは中国戦、韓国戦、オーストラリア戦と観戦。中国戦とオーストラリア戦はチェコ野球協会関係者エリアで観戦。筆者の一押しは3番で中堅を守ったマレク・フルプ選手。偶然にもオーストラリア戦でフルプ選手のお母様、継父と席が隣同士になる。)
©Ishibashi Miako
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